【8月・9月】つかさや旅館のお料理のご紹介
湯田川、夏から秋へ — つかさやの八月と九月
湯田川温泉つかさや旅館のお品書きから
こんにちは、つかさや旅館の若旦那です。
前回は、湯田川の六月と七月の食卓についてお話ししました。
山菜が最後の挨拶をする季節、海が休んで磯モノに主役が移る季節、そして緑茄子と岩牡蠣の物語。
今日はその続き、八月と九月の食卓をご紹介します。
八月は、湯田川で最も熱い季節。何と言ってもだだちゃ豆の月です。
そして九月に入ると、少しずつ、しかし確実に、湯田川の食卓に秋の便りが届きはじめます。
夏の実りから、秋のきざしへ。ゆっくり、ご案内させてください。
🌾 八月:だだちゃ豆の月
湯田川の八月は、だだちゃ豆で始まり、だだちゃ豆で終わります。
だだちゃ豆は、鶴岡の特定の品種だけが名乗ることを許された、特別な枝豆。
そしてその中で、月を追うごとに品種のバトンが渡されていくのです。
- 月のはじめは「早生甘露(わせかんろ)」
- 中旬になると「甘露(かんろ)」
- お盆を過ぎる頃から「早生白山(わせしらやま)」
- 月の終わりは「白山(しらやま)」
同じ「だだちゃ豆」という名前でも、品種によって甘みも香りも、少しずつ違うんです。
品種名まで書き添えてお出ししていますので、月をまたいでお泊まりのお客様には、その違いを味わっていただければ嬉しいです。
塩茹でだけではありません。
とうもろこしと合わせたかき揚げ、〆の炊き込みご飯、デザートにはだだちゃ豆のムースまで。
八月のコースの中で、だだちゃ豆に何度も出会っていただきます。

👨🌾 湯田川 菜な八の畑から
八月に入ると、お品書きに一つの変化が生まれます。
だだちゃ豆の欄に、「湯田川の伊藤さんが育てた」と、生産者のお名前を書き添えるようになるんです。
伊藤さんの畑は、昨年から「菜な八(なな八)」として会社になりました。
だだちゃ豆はもちろん、当館でお出ししているお米も、菜な八さんが育ててくださっているものです。
そう、皮つきの孟宗を茹でるときに使う米ぬかも、菜な八さんの米ぬか。
湯田川のお米を炊いて、そのお米の米ぬかで孟宗を茹でる — 春から夏まで、この土地の中で一つの循環が回っているんです。
八月のだだちゃ豆は、そんな菜な八さんが手塩にかけた一房、一房。
塩茹での湯気の向こうに、湯田川の畑の光景をどうぞ想像してみてください。

🌊 夏の海、由良から届く磯モノ
七月から八月まで、庄内地方では底引き網漁が禁漁になります。沖合の魚に代わって、磯の恵みが主役になる季節。
前菜の一皿目には、由良でとれた生もずくの酢の物。
そして続けて、由良の西貝の塩茹で。
西貝は浅瀬の貝、緑がかった淡い肌に、ちょっと甘みのある清々しい味わいです。
醤油で濃く仕立てる黒バイ貝とは違い、塩だけで茹でて、素材の色を守ります。
お造りは、酒田港の鮪、鼠ヶ関の甘えび、冷凍ものも増えてきますが、なるべく生のものを出したいですね。
八月後半になると、そこにチダイやまぞいが加わることも。あら汁も、まぞいから深い出汁が取れる季節なんです。

🍆 夏野菜、二種類の茄子
七月の主役だった湯田川産の緑茄子は、八月も続けてお出ししています。
すくすくやさい(瀬尾さん)の畑から、まだまだ元気なとろける茄子が届いてくれます。
そして八月の後半、緑茄子の隣にもう一つの茄子が並ぶ日があります。
波渡茄子。海沿いの鶴岡市小堅(こがた)地区で育つ、少し違った顔立ちの茄子です。
同じ「揚げ煮餡」に仕立てても、緑茄子と波渡茄子では、食感も香りも、少しずつ違うんです。
どちらもその日届いた方を、白醤油で色を守りながら、丁寧に仕立てます。
湯田川と海沿い、二つの畑の茄子で、湯田川の夏野菜のもう一つの顔をお楽しみください。

🐖 夏の山伏ポーク、梅干しの角煮
七月は「塩豚 夏野菜と共に」としてお出ししていた山伏ポークですが、八月には角煮として食卓に戻る日があります。
冬の梅干しを、女将が一年かけて仕込んだもの。
その女将特製の梅干しを隠し味に、庄内柿を食べて育った羽黒の山伏ポークをじっくり煮含める。
夏の暑さの中で、少し塩気の効いた角煮が、なぜかとても美味しく感じられる。
梅干しの酸味が肉の甘みを引き締めて、〆のだだちゃ豆ご飯が進む一皿です。
🍑 夏のデザート、水ようかんとだだちゃ豆ムース
八月の食卓の締めくくりは、夏にさっぱり水ようかん。汗をかいた身体に、涼やかな一口を。
そしてもう一つ、湯田川ならではのデザートがあります。
だだちゃ豆のムース。
前菜で塩茹でを、〆でご飯を、そして最後にムースで — 一つの素材を、コースの中で三回も四回もお楽しみいただく。
これも湯田川ならではの過ごし方かもしれません。
🍁 九月:湯田川の食卓に、秋がやってくる
九月に入っても、しばらくは夏の続きです。だだちゃ豆は晩生の「おうら」に。
九月の頭は、夏の食卓のままで、少しだけ空気が変わっていく時期です。
けれども、九月の中旬を過ぎる頃、食卓の景色が一気に変わります。
前菜の冒頭に、庄内らしい山里の恵みが並びはじめるんです。
カラトリイモのずいき、早生もって菊、そして夕顔の葛まわしが続けて三つ、秋の入り口を告げる前菜になります。
七月の岩牡蠣、八月のだだちゃ豆と、はっきりとした主役に会えた夏を過ごした後、
九月の湯田川はゆっくりと、しかし確かに、秋へと歩を進めます。

🌱 カラトリイモとずいき、庄内の郷土
「カラトリイモ」— 庄内で古くから親しまれている里芋の一種です。
九月の食卓には、そのカラトリイモのずいき(茎)が登場します。
つかさやでは、このずいきをだだちゃ豆であえてお出しします。
八月の主役だっただだちゃ豆を、九月には和え衣にする。
夏の名残と秋のはじまりが、一つの小鉢の中で出会う一品です。
そして九月の後半、月の終わりが近づくと、いよいよ芋煮の季節。
湯田川地区の小田さんのカラトリイモを使った、つかさや旅館の芋煮が食卓に並びます。
里芋とは違うねっとりとした甘みと、庄内風の味噌仕立て。
芋煮が出ると、湯田川はもう秋です。

🐟 秋の海、魚が動き出す
八月末で底引き網の禁漁が明けます。九月に入り、しばらく経つと、市場の魚の顔ぶれがぐっと変わってくるんです。
お造りには、あら、のどぐろ、キンコ鯛、赤海老。九月中旬からは、平目やきじはた、真鯛も戻ってきます。
焼き物には、由良のかさご、のどぐろの塩焼き、大羽鰈(おおばかれい)の醤油漬け焼き。
夏のあいだお椀の主役だった笑貝(えがい)は、九月に入っても続いていて、
鶴岡上郷地区のつるむらさきと合わせたお椀で、秋の入り口までお楽しみいただけます。
海が動くと、食卓が動きます。
🌰 栗の炊き込みご飯、そして無花果
九月の後半、〆のごはんにも変化が訪れます。
八月から続いていただだちゃ豆の炊き込みご飯が、月の後半には栗の炊き込みご飯へと切り替わるんです。
だだちゃ豆から栗へ。この一椀の変化に、湯田川の秋が確かにやってきたことを感じていただけると思います。
そしてデザートは、鶴岡上郷地区の無花果(いちじく)の甘露煮。
女将が丁寧に炊き上げた、しっとりとした甘さ。夏の水ようかんから、秋の甘露煮へ。
デザートもまた、季節と共に姿を変えていきます。
🌾 湯田川の食卓、実りの季節に
八月のだだちゃ豆から、九月のカラトリイモへ。夏の海の磯モノから、秋の海の魚介へ。
湯田川の食卓は、カレンダーの通りではなく、庄内の自然の呼吸に合わせて、少しずつ、しかし確かに動いていきます。
八月に泊まれば、湯田川の畑の熱い夏に出会えます。
九月にお越しいただければ、夏の名残と秋のはじまりが混じり合う、静かな移ろいを味わっていただけます。
湯田川の実りの季節に、ぜひ一度お越しください。
だだちゃ豆の品種のリレー、緑茄子と波渡茄子の食べ比べ、秋の魚と栗の炊き込みご飯 —
つかさやの八月と九月は、そんな豊かな食卓でお迎えいたします。
皆さんの「美味しいね」という笑顔に、湯田川でお会いできるのを楽しみにしています。
湯田川温泉 つかさや旅館